Diario di visita: ムンク、ローマの景観

最近の美術展覧会は、宣伝やプレゼンもうまくて、楽しみな反面、大人気すぎて混雑がすごい。
見にいく気が失せてしまうこともしばしば。

今回のムンク展も「叫び」が来ちゃうならもう大変だから、もうパスしようと思っていました。

が、「叫び」はともかく版画作品がかなり多く出展されてると聞いて、
だったらやっぱり見にいくかー、と出かけてみました。

が、その前に。
上野駅の公園口を出て、信号渡ったところにある公園内施設の催し物まとめて掲示板をふと見たら、
国立西洋美術館では、ルーベンス展(これはほんとにパスした)と、
ローマの景観─そのイメージとメディアの変遷」展というものが目につく。
イタリアものは好きなので、あまり時間の余裕はなかったものの、のぞいてみることにしました。

会場は新館奥の版画素描展示室。ピラネージの版画集「ローマの景観」を中心に、
まさに新旧のローマを描いた絵画や写真などいろいろ。木村伊兵衛のもありました。
「ローマの景観」は額入り版画、複製、そして本に綴じられたのが展示されていたけど、
これはペラペラめくってみてみたい・・・。

絵画や版画と違って、写真は現実やそのものを写し出しているように思ってしまうけど、
写真も(もちろんスーパーリアルな絵画も)主題にしろ構図にしろ瞬間にしろ、写す人の意図がなければ成立しない。
写真だからって、現実そのものとは違う──と、改めて思うのであった。

もちろん、ピラネージ作品を堪能したけれど、あわせて意思のある写真も楽しめてよかったです。
それにしてもローマは美しい(実際に行くと小汚かったりするけどね笑)。

そしていそいで、「ムンク展─共鳴する魂の叫び」展@東京都美術館。
もう閉館まで一時間切ったぐらいなのに入場まで行列ができていた!

ムンク展は、わりとまえに国立西洋美術館で装飾をテーマにしたものが開催されてて、
それがとてもよかった。というか、今回の「叫び」のような目玉がないだけに
企画で勝負するしかなかったのだろうけど、まさにキュレーションの妙。

時間もないし、タブローはその時みたし、というわけで、版画作品だけじっくり見ようと決めました。
多くの来場者は逆に、版画のところは早足になりがちで、ゆったり見られてよかったのと、
「みんな版画もちゃんと見なよ!」という気持ちとで、ややフクザツ笑。

そして、ムンクの木版画はこれまでもみる機会があったけれど、
あらためて今回リトグラフ作品をたくさんみることができて、ほんとうに行って良かった!
リト作品のなかではメインの「マドンナ」はステート違いもあって、見比べるのは飽きない。

実際のリトグラフの石版石そのものも展示されていましたが、
これは「マドンナ」と「吸血鬼」の版が背中合わせになっているもの。
そしてよくみると、同じ大きさの石を張り合わせたように見えました(さだかではないけど)。

リトグラフの石版石は使うたびに研いでいくのでだんだん厚さが薄くなり、
薄くなりすぎるとプレス機で圧をかけづらくなるので、
こうやってサイズの同じ別の石をくっつけることは珍しくありません。

作品自体の刷りは、刷り師さんに任せたらしいけど、自身でもプレス機をもっていたそうで、
ムンクがそんなにリトグラフやる気満々だったことがわかって、なんだかとてもうれしかった。

そしてもうひとつ。
木版画では、版木をジグソーで切って、それぞれ違う色インクをのせてから、
また元どおりに合体させて(ジクソーバズルみたいに)一度に刷る多色刷りってあるのだけど、
それはムンクの発案だったんだって。

いろいろと研究心もあり、今回は版画家としてのムンクを見られて、ほんとに行ってよかった。
もちろんやっぱり「叫び」も後ろの方からみる。

そしてスノーボールを買って帰る。
でもちょっと、自画像描きすぎだと思いました笑。
自画像を描く作家の気持ちがいまだにわからん。

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ローマの景観―そのイメージとメディアの変遷
2018年10月16日(火)− 2019年1月20日(日)
国立西洋美術館 版画素描展示室 サイト

ムンク展―共鳴する魂の叫び
2018年10月27日− 2019年1月20日
東京都美術館 サイト

2019はじまり。

今年もどうぞよろしくお願いします。

 

昨年ウェブサイトを模様替えして、あれこれ投稿しようとおもっているうちに新年明けてしまいました。今年こそなんとかがんばりたい。

 

さて、まずは今年の年賀状から。

 

ここ数年の年賀状はだいたいリトグラフで作ったものか、木版画で作ってからそれをプリントゴッコのどちらかですが、今年はリトグラフ!
2種類の絵柄を作りました(一枚ずつ刷るより、2枚ずつ刷る方が早いという現実的理由もあり)。

絵のモデルは、うちの猫ガブリエルちゃん。

 

ふだんのリトグラフ作品は10枚ちょっとぐらいしか刷らないのもあって、年に一度、こうして大量に枚数する経験もとても貴重です。
そして、わたしのなかではいつも何かしらチャレンジというか、実験的なことを取り入れていて、それがふだんの作品作りに活かされることがよくあります。とはいえ、たいてい技法的なことなので、できあがった作品にはあまり関係ないことかも。

昨年はひさしぶりに個展もせず、のんびりだらだら過ごしてしまったので、今年はとにかく制作に励みたいと思います。そして、来年あたりにちゃんと個展ができるといいなあ、と。

 

そんなかんじで、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

最後の画像は、もうすぐ開かれるのを待つばかりの餅。揚げ餅にするよ。

秋のMOWリトグラフまつり、しました。

前回投稿のつづきです。というより、いよいよ本題。

ワークショップをしたのは、春日部にある Art & Craft studio T-BOX。平島鉄也さんという金工作家のかたの工房であり、お教室であるところ。
そこで毎年、秋の週末にお教室の作品展や、クラフト系作家さんたちの出店など盛りだくさんな「858−市」が開かれていて、私はそのうちの一日だけ、リトグラフ・ワークショップとして参加しました。
その前日には、銅版画作家のヒルネ版画工房かずみさんが紙版画ワークショップをなさっていて、柿さん持ち込みのプレス機をちゃっかりそのままお借りしてのリトグラフでした。

店先(といっても、机二つ並べたオープンなところ)はまずこんな感じ。見本作品をならべてみました。
11月下旬だったのものあり、ただ「リトグラフを作ろう!」よりも「クリスマスカードを作ろう!」ってかんじに。もちろん「MOWの紙で」も忘れずアピール笑。

お借りしてのプレス機まわりもこのように。見えにくいけど、くまちゃんのはちみつボトルは、アラビアゴム(ピュアと薬品酸度高めのと)入れています。

制作に参加してくださった方たちは、まさに老若男女の小さいお子さんから元気な先輩方まで。
みなさんの作ってるところや出来上がった作品を、全員ぶん写真にとってなかったのが大変悔やまれるけれど、なんとか忘れずに撮影したのを少しご紹介します。

まずは、ちいさい女の子とそのお母さん。
お母さんは、MOWリトグラフでツリーを、女の子はアルミ版に自由に描いてもらいました。
ツリーのほうは、女の子が星型消しゴムスタンプをおしたり、お絵かきいれたり素敵な母娘合作。
リトグラフのほうは、インクを盛るローラーを転がしたり、プレス機のハンドルも回したりと、ほんとうに頑張り屋さんでした。そして、お父さんもいれて、家族みんなのぶん3枚をすり上げました。

ちいさいお子さんに限らず、私がところどころ手伝いはするものの、ここだけは必ず!と参加者ご自身の手でやっていただいたのが、刷り上がった作品をめくるところ。みんな「わぁああ☆」ってなるの、こちらも大変うれしいかぎり。

こちらは鉄道少年。画力があるので、アルミ版にしっかり描いてもらいました。右側は、描画しおわってからアラビアゴムをスポンジにつけてポンポンと塗っているところ。まず最初は、絵をこすらないように叩くように塗るのです。それもしっかりと注意しながらやってくれました。
彼も、インクのせ、プレス機とぜんぶ自分でがんばってくれて3枚ほど刷ってくれました。かっこいい絵!

そして、猫だいすきマダムによる季節感たっぷりの作品。秋らしいー。そして、すごくふわっふわの猫ちゃんたちの写真をみせていただき、もちろん、わたしもうちの猫ちゃんたちの写真を存分に見せびらかしたのであった笑。

そしてこちらは、MOWリトグラフの良さを全部ひきだしてくれた作品。
版だけをみると、クレヨンで、短いタテ線と点てん、ちいさい四角を描いてるだけだけど、それを切り抜いて、またコンポジションも楽しめるのでした。
それに、手袋の手首のゴム編みに相当するところにある横線は、もともとMOWの紙の折り目の部分、そこをまたうまく使って表現にとりいれてくれました。うまいっ。

ひょんな思いつきから始めてみた、MOWリトグラフだけど、みなさんがこうやって素敵な作品も作り出して、そしてなにより楽しんでいってくださったというのは、私もほんとうに嬉しかったし、楽しかったです!

こういう機会をくださった、平島さんはじめアトリエのみなさま、参加してくださった皆さん、そしてプレス機をかしてくれただけでなく、当日もしっかりサポートしてくれた柿﨑さん、本当にありがとうございました!

おかげで、やっぱりリトグラフはたのしいなー!と思えた秋の一日でありました。