「世界を変えた書物」で作るカルトン

先月、上野の森美術館で開催されていた話題の「世界を変えた書物」展
なんとかギリギリ見に行くことができました。

科学系の本が中心ながら、やはり本という形、そして印刷をみるのはとても楽しい。
なにしろ、当時はまだ、印刷と版画ってそんなに離れてない。

私はよく、版画とくにリトグラフの技法を聞かれたときに、布にたとえてお答えすることがあります。
鶴の恩返しみたいなぱったんぱったん機織りも、工場の機械でがっしゃんがっしゃん大量に織るのも、タテ糸にヨコ糸通している原理はかわりない、版画と印刷も(とりわけリトグラフとオフセット印刷は)そんなかんじなんですよー、というふうに。
いまも手織り作業が生き続けているように、プレス機をぐるぐる回して一枚ずつ版画も生き続けています。

話戻って、この展覧会。
美しい図版も、銅版画などで一枚一枚刷られたもの、本が書かれた内容はもちろん、どれほどものとしても貴重で価値あるものだったのでしょう。
とりわけピラネージの銅版画が本になったのは、眼福としかいいようがない。

そして、グッズもいろいろあって、タブロイドサイズのプログラムが2種類ありました。
こういう紙モノには目がない私。もちろん手に取っているうちに、
・・・これで、カルトンつくれるんじゃない??と思ったのでした。

そうとなれば、予備も含めて多めに買い込んで(失敗したらいかんので笑)、作業あるのみ。

道具はいつものこんな感じです。

厚紙はいぜん作ったカルトン(数年前の個展に、イタリアの新聞紙や和紙にリトグラフを刷って、作りました)の残りがあったのでそれを使いました。

当時は、こんな感じで作っていたのでした。20個以上つくったかな。

さて、今回のは。

この、でっかいノミちゃん(A・ロバート・フック「微細物誌(ミクログラフィア)」1665年)のページをみてたら、もうこの出来上がりが脳内にありました。

表側は、ちょうど本の表紙、背表紙そのものがサイズ的にもぴったり(コロンナ「ポリフィルス狂恋夢」1499年)。

ちょうどA4サイズの紙がはさめます。実用的なのだ。

会場のグッズもいろんなもの(Tシャツとか傘とか風呂敷とか)があったし、なかにはデューラーの図を使ったA4ファイルもあったけど、A4見開きクリアファイルで、こういう本の表がわ、そして中の見開きそのものを使ったやつがあったら、ぜったい買ったのに!

とはいえ、久しぶりにカルトン作りして、細かいところは不具合あれど、自分で使うんだから全然問題なし。いいのが作れました。

「作家Zakka百貨展」に参加します。

夏のお楽しみ「作家Zakka百貨展」。
作家が本気でつくるザッカということで、今年でもう7回目となりました。
そして私はありがたいことに毎年お誘いいただき皆勤賞。

今回のテーマは「ヒラヒラ〜風と手ぬぐい」です。

自分なりの「風」や「ヒラヒラ」。
そこから広がるイメージ、ありきたりじゃないもの、
そんな感じに考えていくうちに、今年のわたしの作品は、ねこ!
とはいっても、ヒトのための猫雑貨ではなく、猫のために。
それも、私がふだん制作しているリトグラフを活かしてのもの。

ザッカその1は、「猫まくら」です。

猫キッカーとか、ケリケリとか言われ方はいろいろあるものの、
つまり猫ちゃんのおもちゃ。
なかに少しマタタビを忍ばせてあります。
写真のとおり、しっかりした布にリトグラフでねずみちゃんを
刷ってみました。革ひものシッポつき(ココが、ヒラヒラってことで笑)。

 

ザッカその2は、出展作家共通のアイテム、手ぬぐい。

もちろん、リトグラフで刷った猫。

「猫を首に巻こうとしつこいニンゲンに与えて、猫がのんびり過ごす」ため、のデザイン。

いまどき猫を首にまいたら汗に猫毛まとわりついて大変だしね。
首にもそして頭にもしっかり巻ける、ちょっと長めの1メートルに仕立てました。

はじめは、晒にリトグラフって刷れるんだろーか?

リト歴かるく30年オーバーの私ですが、今までやったことない。

そして、案外いけました。
マチエールのインプレッションも想像以上。よしよし。

ちょっとアップ。

 

さらにザッカその3は、猫じゃらしを兼ねて、お掃除にもつかえる「はたき」。

ほんとうは、このはたきにぴったりの薄い化繊生地にもリトグラフを刷りたかったものの、さすがに厳しかった。

そのかわり、生地と一緒に、丈夫な和紙に刷られた昔の作品の端っこ切り落としを混ぜてあります。
使い道ないもののずっと捨てられなくて取っておいたけど、こんなところで陽の目をみることに笑!

このように、毎年「お題」をいただいて、いつもの作品とは違う、
でも、いつもの作家らしさを生かしての雑貨づくりは
毎度ほんとーに頭をひねり、新たな技法にチャレンジもあり、
いつもの制作の幅もひろがります。

ご一緒している作家さんたちもほんとに力作ぞろい。
「そう来たか!」とほくそ笑んだりしてしまいます。

まだまだ酷暑が続きますが、ぜひお運びいただけると嬉しいです。
ギャラリーには、本格英国茶とケーキが美味しいカフェも併設しています。
どうぞよろしくお願い致します!!

ちなみに、お値段のほうはこんな感じにしました。
猫まくら 2,200円。猫手ぬぐい 2,200円。はたき1,500円。ほか、ポストカードサイズの小さなリトグラフ500円など。ふだん作ってるリトグラフ作品も2点ほど出します。どぞ夜露四苦。

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作家Zakka百貨展 vol.7
2018年8月3日(金)−12日(日)*7日(火)休廊
11:00−18:30 *最終日は16:00まで
葡萄屋ギャラリー arts + cafe
143-0023 東京都大田区山王3−29−3 JR大森駅西口5分 地図
tel. 03-6429-7331
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おまけ動画。

ウリエルさん(東京都在住・8歳) 「猫まくら」ユーザーレビュー ★★★★☆ 案外しっかり作ってあるし、マタタビのほのかな香りにウットリします。ねずみの絵がついてて、シッポもあるけど、本当のねずみじゃないのかな。本当のねずみなら食べたいけど(地域猫じだいはよく食べてたもの)。 とても気に入ったけど、「カメラ目線ください」とか「お手手はここにおいて」とかうるさいヒトがいたので、星ひとつマイナスにしました。 #cat #ウリエルちゃん #gatto #ねこ #猫ちゃん #猫グッズ #猫雑貨 #マタタビ #lthigraphforcats #lithographonfabric

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もうすぐ猫の日

すっかり更新を怠けているうちに、2月も後半になっていたとは。
そして2月後半の目玉といえば、猫の日。うちにも猫が3匹います。なので今回は、猫たちの紹介および、猫作品について書こうと思います。

ここ最近の猫ブーム(という言い方が実はもうイヤなんだけど)、猫をお題にしたありとあらゆるものがありますが、私のやってる版画界隈でも、もちろんブームは健在。猫をテーマにした作品の展示や、猫専門のギャラリーなど、もりだくさん。

そして私も、よく展覧会をさせてもらう某所では「いや〜、橋本さん、やっぱり猫作品は強いですよ!」と言われることもあり、なるほどなー、とも思ったりして、こっそり猫作品を作ってみたりはしました。作ったことは作ったのである。説明しないとどこに猫が描かれているのかさっぱりわからん作品を。まったくの抽象画ってわけではないけど、しっかり具象的な画風でもない。猫以前にすべてが、人知れずこっそり描かれている作風のため、猫ももちろん人知れずこっそり描かれ、展示され、そして誰にもらわれることもなく家に帰ってくるのである。

そんなことはまあいい(よくないけどさ)。そこで私も考えました。これでいいのか、と。でも昨今の猫ブームの作品って、ようするに猫好きの人間のための作品でしょう?もちろん買うのが人間だからしょうがないんだけど。でも、ここまで猫ブームというなら、猫のために作品を作ろうよ!!!そして、猫に買ってあげようよ、人間のためじゃなく!!と、私はこっそり熱く思ったのでした。

そこでまた考える。猫がみて楽しいであろう作品とは。

深く考えたすえに、箱を描くことにしました。だって、猫たち箱大好きだよね。うちの猫ちゃんたちもAmazonの箱とか大好きだもの。なのでほんとは「Amazon箱」にしたかったけど展示場所でなにかと差し障りそうなので、ただの箱にしてみました。それが「La mia preferita(お気に入りの箱)」という作品です。

気に入っていってもらえたかは、ちょっとわからないけれど。

その後もカリカリの作品も作ったりしました。が、当時はよく食べていたメディファスをモチーフに、チキン味おさかな味と2作品つくったものの、その後、写真のガブリエルちゃんに食物アレルギーがあるらしいことが判明。今はロイヤルカナンのセレクトプロテイン ダック&ライスを食べているので、はやく作品も作り直さなくては。

そんなわけで、最後に猫たち紹介。
地域猫だった母猫(生後半年ちょっとで出産のヤンママ)が、授乳期のおわるころ「この子たちに餌をだしなさい」といわんばかりに、子猫4匹をうちに置いてって失踪(結局、近所でカレシと一緒に暮らしていた)。子猫のうち1匹もお母さんに合流したので、残りの3匹に餌やりつづけて早7年あまり。今は完全室内飼いにしています。
名前は、写真左からラファエルちゃん♂、上にも写ってるガブリエルちゃん♂、ウリエルちゃん♀。ちなみに、一抜けした子はミカエルちゃん♀でした。

肝心の作品については、次回もう少し詳しくご紹介しようと思います。
今後も、猫フレンドリーな作品作りを心がけていきたい。