No.13 January 2002
  
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"che tempo fa? "
<<窓をあけて空をみる>>(部分)

ed.5,25cmX20cm,
lithograph and woodcut,2001

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トップページにはあげませんでしたが、31日に加筆してあります。


2002年1月1日(火)

 新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 今年最初の一枚は、「版画の愉しみ」です。もちろん見て楽しむものですが、版画を作っていればこその楽しみ方があります。それは「めくる時」です。プレス機をとおしてどんなふうに摺れたかとおもいながら版に伏せていた紙をめくる時、いつもわくわくします。

 今回、新年のごあいさつ特製ムービーを作りました。ぜひご覧ください。今年もどうぞよろしくおつきあいください。


1月5日(土)

 やっと寒さにも慣れかけたと思ったら、また一段冷込みが強くなりました。防寒、防犯のため夜は雨戸をしっかり閉めているので、朝になっても部屋の中が真っ暗。雨戸をあけて、空が澄み切った冬の青空だと、とてもいい気分になります。

 タイトルの"che tempo fa?"というのは、イタリア語で「お天気は?」という意味で、イタリアでは天気予報番組の代名詞にもなっているそうです。


1月13日(日)

 刷りおわったばかりで、また版の上に伏せたままの紙をめくるときは、朝まっくらな状態で窓をあける時の楽しさに似ています。

 もちろん、版を作る時や版にインクをのせている時にすでにそれなりに配慮していますし、窓をあける時も、空気の冷たさや音、湿度の具合、はたまた昨日みた天気予報などのヒントがあるので、まったく予期し得ないものが!みたいなことはありません。もちろん、私が求めてるのは、おどろきとか予想だにしないものに出会うスリルではないし、刺激を求めてるわけでもないので、「やあ、どうも」といいたくなるような普通の出会いが好きです。

 本当をいうと版画というのはそのエディション数の中では同じものが仕上がるはずなのです。しかし、実際にはプレス機をつかってるといっても、それはただ人力ではできない圧力をかけるためだけなので、版をつくるのも、それにインク(油絵の具ににている)をもるのも、刷る圧力を調節するのも、自分の手をたよりに一枚一枚作業しているので、やはり決して「同じもの」はできあがりません。それもまた楽しさです。


1月19日(土)

 だいぶ日が長くなった気がします。1月20日発売の「月刊美術」という雑誌の『版画NOW』で11月にとりあげた「casa di pioggia<雨のいえ>」が掲載&誌上頒布されます。よかったら本屋さんで見てみて下さい。以上、宣伝でした..。

 さて、前回の続きですが。たしかに、版画は「同じもの」を一定数つくりあげなければいけないのでしょうが、作っている(摺っている)本人としては、同じものの中にある違いが楽しいとも言えます。もちろん、見るからに「違う」のは「刷り損じ」といいます。念のため。

 特に私は多色刷りをしているので、版を重ねる度に、それぞれにインクの重なり具合で、色味も全然違ってきます。それをコントロールしていく楽しみと、いわば版やインクの言い分を受け入れる楽しみとがあります。


1月31日(木)

 もう今年も一月たってしまった。ことしのお正月は特になにもせずにのんびり読書などしてゆっくり過ごすことにしてしまったため、その読みかけの「処置」におおいに困った一ヶ月でした。続きは読みたいし、ほかにやることもあるし。

 今月分のお話は今回でおわりですが、この作品は、自分が版画を摺っていて楽しいと思えること、そして、摺りたての紙をめくることに、朝窓をあけて空をみることの楽しさを重ねてみたと言えます。いままでも作品アイディアができるまでに思ったことなどは書いてきました。この「摺る」時の楽しさもやはり版画のおおきな魅力です。摺りたてのまるで炊きたてのごはんつやつやみたいなインクのつやつや感。自分で作っているけれど、紙を版の上にふせた瞬間に一度自分から作品が離れて、版と紙とインクと圧力だけの世界にゆだねられます。そして、またいっぺんにそのヴィジョンが自分に帰ってくる。とても楽しい世界です。

 それではまた来月。インフルエンザに注意。