No.16 April 2002  
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"CORSO LENTO "
<<緩い流れ>>

ed.10,57cmX42cm,
lithograph ,1994

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4月1日(月)

 新年度は始まりました。私とっては、とくに何か生活に変化が訪れたりはしませんが、なにか新しいことを始めた方も、いつも通りの方も、よろしくおつきあいください。

 今月の作品は、「コルソ・レント」です。かなり初期の作品のひとつですが、この頃はイタリアに昔栄えたエトルリア文化などのつぼ(アンフォラなど)などがよくモチーフにでてきていました。これはつぼではないですけど・・。イタリアに行った時はローマのエトルリアのものばかり展示している博物館はかならず訪問します。おもしろい形のテラコッタなど、見ててとても楽しいものです。

 そういう「器」と「植物(とくに果物)」がモチーフになってるのは、昔からすきなのですが、ただ静物画というのでなく、たぶんマチスとかの、色のコンポジションの楽しさが好きなのだと思います。


4月8日(月)

 器と果物といえば、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」のオープニングのシーンで窓辺(ベランダ?)の上に、アンフォラのような器がおいてあったり、同じく最初のお母さんが電話をかけるシーンでもテーブルに果物を盛った器があったと思います。こういうところでとてもイタリアらしさを感じてしまいました。テーブルにお花が飾ってあるより、果物がある方が色の強さ(実際にそこに色味がなくても)を感じます。

 そういえば、先日テレビで、この映画の少年トトを演じた子が出ていました。もう二十歳すぎで立派な大人でした。その後いくつか映画にでていたのにすっかり消えてしまったとおもったら、将来はやはり映画関係の仕事をしたいそうです。最近、イタリア禁断症状が顕著になってきてるので、この番組もそうですが、昨日ひさびさにみた「眺めのいい部屋」はかなり効きました。(つづく)


4月15日(月)

 更新は週に一回ときめているわけではないのだけど、やはり週末にならないと「危機感」がうまれずに、結局週一ペースが定着してしまいました。しかも、だんだんずれ込んで、今月はみんな更新日が月曜日(気持ち的には日曜日の深夜なのだが)になっているのをみて、もっとがんばろう、と思ったのでした。

 この、果物の色と形のコンポジションがいつ頃から好きなのだろうか、と考えてみたら、かなり昔に遡ることに気がつきました。すくなくとも、作品のモチーフとしては、学生時代にすでに登場しています。ちょうど色味としては今月の作品に似ている気がします。だから、思い出したのかも知れない。人物がソファのようなところでくつろいでいて、描いてあるのは、その投げ出した足(ズボン)の部分。ブルーのズボンの傍らに、オレンジがこの作品のようにあります。オレンジの色の重なり具合が、当時の私としては(なにぶん学生ですから)、とてもうまくいって気に入ったのを覚えています。まだ、版が自分のいうことをなかなか聞いてくれない時代なので、たいへん貴重な体験でした。

 当時は別に、というかまったくイタリアに興味も関心も持っていなかったので、イタリア愛好家的発想からうまれたイメージではないことはたしかなのだけど。やっぱりマチスの色と形なのだろうか。マチスといえば、高校生の頃(たぶん)に、竹橋の近代美術館でやっていたマチス展で「ダンス」を見た時に、絵としての衝撃というより、当時ともだちとの間で流行っていた「遠心力ダンス」そのものが描かれている(!?)という感激が印象深いです。勝手に、図版から絵をおこして、みんなでシルクスクリーンで、おそろいの「ダンスTシャツ」まで、作りました。ちなみに「遠心力ダンス」というのは、ただ数名で手をつないで輪になって、ぐるぐるとできる限りのスピードで、遠心力のせいで(?)つないだ手が離れるまで回る、というたわいのない女子高生らしい遊びでした。もちろん、お揃いの「ダンスTシャツ」を着て。

 マチスからとんでもない方へ話がとんでしまいました。遠心力のせいかも。


4月21日(日)

 そろそろゴールデン・ウィークが待ち遠しい頃でしょうか。私は「平常営業」の予定です。

 先週マチスの「ダンス」で盛り上がった高校生活の一端(?)を書きましたが、大学では、版画はつづけていたものの(ちなみにリトグラフなど版画を始めたのは高校の時です)やはりデザイン科で、しかもなぜか広告コースをとっていたので、おかげでどれだけ世の中を「仕掛ける」ためにたくさんの人が頭をひねってるかを実感することになりました。 自分が何を考えるのか、人にそれを伝えたり、人が考えることを感じたり、デザインとはビジュアル系文化人類学なのだ、とつくづく思いました。なにか特定の商品にまつわるだけでもないし、商業的なだけでもないのです。

 そう言う意味では、今の私がやっていることも「ビジュアル系文化人類学探究」の様なものだと思います。べつに論文をかいたり、体系的に提示するわけではないけど、色と形の言葉でなにか伝わったり、見てくれた人になにか作用する、そういう「つなげているもの」にとても興味があります。


4月28日(日)

 連休にはいって、国立近代美術館で「カンディンスキー展」を見ました。近美に来たのはとてもひさしぶりだったのですが、会場も配置も広々していて楽しかったです。誰も柵の前にへばりついてないし、ベルトコンベアに乗って押し流されてるようなことも全くないし、みんな自由に見たい作品を近くから見たり、遠くからみたり。今回の改装にあわせてオープンしたというレストランが一番混雑していたかもしれない。お手頃な価格だし、美味しかったし、おしゃれなかんじだし、出来たばっかりだし。

 今月書いてきた、「色と形」については、自分にとってはとても重要な要素なのだけど、一方で、それでなにが伝えられるのだろうと考えることもあります。色と形に思いを変換させていく過程で、よく考えないと、ただの「模様」になってしまうからです。今月は特にそういうことを考え直すいい機会になりました。カンディンスキー展でも、とてもカラフルな作品から、そうでもない作品までいろいろありましたが、色と形が好きな作品を見るのも、考えるヒントになったりします。

 やはり、自分がそういうことをしているので、人の作品をみても、何を考えてどうしてこういう作品をつくるに至ったのだろう、と気になることはあります。作品をみてどきどきしたりするのは、なにがどきどきさせるのだろう、とか。でも、作品鑑賞は、むずかしく考えたり、わかろうとしたりする必要はなく、感じるものだと思うので、どうにかして感じ取りたい、と思うのです。

 映画や本などは、「この作者がいわんとすることは?」とかそんなに考えないで、おもしろかった、つまらなかった、気に入った、とか感想がいえるのに、絵になると、なにか「読み取って理解しなくては」と意気込んでしまう人いますよね。私の個展にも「私は絵の専門外ですので、何も言えることはありません」っていって帰っていった人がいらしゃったけど。

 このへんのことを、いろいろ頭と心のなかでぐるぐるさせながら、あたらしい作品がうまれてくれば、と思ってます。個展まで半年あまりなので、そろそろ方向性も明確にしなくては、と思っているこの頃です。