やってみよう!リトグラフ

なんだかんだと引きこもったまま師走!
今年の5月ごろ、思いつきでやってみたステイホームなワークショップを、
せっかくなので画像解説つきで記録しておこうと思います。

アトリエにお越しいただいてたリトグラフの体験ワークショップの通信版、
その名も「やってみよう!リトグラフ」。

もちろんzoomでやるとかではなく、上記にある版や描画材をお送りして、
おうちでお好きなときに描画ののち返送いただき、
こちらで製版&刷り、そして出来上がりをお送りする企画でした。

絵を描き慣れてる方はもちろん、リト初心者の方、お子さんまで
ご参加いただきました。
その作品のかずかず画像はこちらに(画像提供ありがとうございました!!)。

ここで、リトグラフ豆知識!
リトグラフは、水と油の反発を利用した、版画の一種です。
18世紀末、ドイツ人のアロイス・ゼネフェルダーさんが新しい印刷方法をあれこれ工夫するなかで発明しました。ほんとうはお父さんのように役者になりたかったゼネフェルダーさん、でもパッとせず、舞台でつかう楽譜をたくさんばんばん刷れる方法を見つけてがっつり稼ごうと決意。結果として現在のオフセット印刷につながる大発明でありました。すごい偉い。
詳しくは→ The Invention of Lithography by Alois Senefelder

*キットが届いたら、描画しよう

下書ききっちりなんてしないで、気分の赴くままに描いてみようー。
でもやっぱり下書きしたいときは、ポンキーなどでうすーく目立たないように
あたりをつけておくのもよし。描いたものを消すことはできません。

つまようじで塗ってるのはアラビアゴム(水性)。
描きたくないところの「マスキング」につかいます。
【追記】つまり、一度アラビアゴムを塗ってしまうと、
あとで上からいくら描いても「白抜き」になります!
マスキング、白抜き、にするつもりがない場合、
アラビアゴムを使う必要はありません。
(わかりにくかったようなので追記しました)
目の*を描いてから、白目?のところにアラビアゴムってやり方も。
アラビアゴムが完全に乾いてから、ポンキー(油性)で描こう。
ぐりぐり描いたり、寝かせてさらさら描いたり、一本でもいろんな表現が。

描画するときに、ものすごく大切なこと。それは、版に直接さわらない!!
リトは版に油性の描画材で絵を描きます。
黒い色はどこに描いたかを、人の目にわかりやすくしてるだけ。
版にとって重要なのは、色でなく、描画材料の油性分がついたかどうか。
つまり手でペタペタすると手の脂で描画したのと同じことに!!
下の画像のように、紙をあてて手を置くといいよ。

綿棒は、ラビングクレヨンというねっとりしたクレヨン(油性)。
パステルのように軽くこすって(rubbing)使います。
描画できあがり!
ねこちゃんもできあがり!

とはいえ、こちらのほうは切り抜いて刷りたいので、もうひと作業。
切り抜きは、私がやる製版工程の最後にやるため、おうちで版を切り抜いてしまわないでね。そのためにどこを切るかトレペに線で書いておいてください。

切り抜きたい線をトレペに、しるしておきます。
版の左上と、トレペの★印をあわせておくこと。
*キットを送り返してもらって、製版をします

描画や、必要なら切り抜き線の指定がすんだら、版を送り返してもらいます。
(ポンキーやキャップなども、もし返していただけたらうれしい・・・)

ここからは、私の作業。まずは製版!

アラビアゴム(水性)という薬品を、絵をこすらないように全面に。
金魚にはいってたやつと同じものなので、マスキングしていたところが溶けてでてきます。白目もくっきり!
アラビアゴムは酸度のブレンドが違うものを使い分けてます。
そしてムラなく(すごく大事!)整える。

これで製版その1が終了。しばらく版を休ませます(これもすごく大事!)。
すごく急いでたら、2時間後ぐらいに次の行程に進みますが、
ふだん自分の作品でデリケートな描画のとき、数日おくことも。

というわけで、製版その2へ。
ここから先、刷り始めるまでは、水分は大厳禁!!
さっき塗った、アラビアゴムの層が見えないけどしっかり効いています。

なんと!!せっかく描いた絵を溶剤(油性)で消しちゃいます(((;゚Д゚)))
すっきりサッパリ((((;゚Д゚)))) でもアラビアゴムが版を守ってる。
さらに、リト用のラッカー(油性)をムラなく塗って((((;゚Д゚)))))))
そして先ほどの猫ちゃんは、ここでカットしますー。
ハサミでチョキチョキ。細かいカットはできないけど。

製版が終わったら、刷ります!

ようやくここまできました。刷りましょうー!

インク(油性)は、黒と赤。どっちか決めよう。

先ほどのラッカーを塗った版に、刷りに使うインクを少量なじませてから、
版を、水で洗い、アラビアゴムを流します。

最初に描いたとおりの絵が出てきました!

用意したインクをローラーで版にのせます((ΦωΦ))
油と水の反発による版画リトグラフ。
かならず版面を水で湿しながら(黄色いスポンジ)、油性のインクで刷ります。
これまでしてきた製版の目的は、
描いたところを親油性に、描いていないところを親水性にすること。
だから、絵を描いたところにだけ、描いたとおりに油性インクつくわけです。

プレス機へ。
今回は、銅版画用の小さなプレス機を使っています。
(大きいリトプレス機は、本ブログのトップ固定投稿にある画像参照)。

紙(ポストカード)に版をのせて、プレス機をぐるぐる。
そして、いよいよ・・・。

じゃーーん!

同じようにして、どんどん刷っていきます。
次は、もう一つのコーヒーカップの版を同じように、今度は黒いインクで。
こちらはポストカード全面に刷るため、版にも目一杯に描きました。
版はポストカードより少し大きいので、はじっこまでは刷れないけれど、
でも全面に刷るために、余分に描いておくことが必要なのです。

全面に刷る場合は、版に紙を伏せて置きます。さっき((ΦωΦ))と逆。

そんなわけで、ようやく、みんな刷り上がりました!!!

数日インクが乾くまで待ってから、版と一緒に、刷り上がりをお送りして、
「やってみよう!リトグラフ」完成です!!

楽しく製作をしながら「手洗いしっかり・3密をさける・マスクをつける(フェイスシールドとかでなく)・こまめに換気・体調悪いときは休む」もう少し続けていきましょー。

ながーーい投稿になってしまいましたが、おつきあいありがとうございました!
「やってみよう!リトグラフ」また、過去にアトリエで開催したワークショップで生まれた作品たちはこちらで紹介しています!ぜひご覧くださいねー。

最後にもうひとう、リトグラフ豆知識!
リトグラフはもともと石(石灰岩)を版にしていました。なので石版画とも呼ばれます。なんでそんな重たいものに?と思うけど、かつてはたやすく入手できて、なんども削って使えてコスパもよかったからでしょう。
その石版石の名産地ドイツのゾルンフォーフェンは、もう一つ有名なものがあります。
それは始祖鳥の化石!!
ゾルンフォーフェンのリトグラフ石版石の石切場から見つかりました。
そのため、始祖鳥(最初はその羽について)の学名は、アーケオプテリクス・リトグラフィカと、リトグラフにちなんだ名前になっています。すごいね!

#リトグラフ #体験 #ワークショップ #リトグラフ体験

秋のMOWリトグラフまつり、しました。

前回投稿のつづきです。というより、いよいよ本題。

ワークショップをしたのは、春日部にある Art & Craft studio T-BOX。平島鉄也さんという金工作家のかたの工房であり、お教室であるところ。
そこで毎年、秋の週末にお教室の作品展や、クラフト系作家さんたちの出店など盛りだくさんな「858−市」が開かれていて、私はそのうちの一日だけ、リトグラフ・ワークショップとして参加しました。
その前日には、銅版画作家のヒルネ版画工房かずみさんが紙版画ワークショップをなさっていて、柿さん持ち込みのプレス機をちゃっかりそのままお借りしてのリトグラフでした。

店先(といっても、机二つ並べたオープンなところ)はまずこんな感じ。見本作品をならべてみました。
11月下旬だったのものあり、ただ「リトグラフを作ろう!」よりも「クリスマスカードを作ろう!」ってかんじに。もちろん「MOWの紙で」も忘れずアピール笑。

お借りしてのプレス機まわりもこのように。見えにくいけど、くまちゃんのはちみつボトルは、アラビアゴム(ピュアと薬品酸度高めのと)入れています。

制作に参加してくださった方たちは、まさに老若男女の小さいお子さんから元気な先輩方まで。
みなさんの作ってるところや出来上がった作品を、全員ぶん写真にとってなかったのが大変悔やまれるけれど、なんとか忘れずに撮影したのを少しご紹介します。

まずは、ちいさい女の子とそのお母さん。
お母さんは、MOWリトグラフでツリーを、女の子はアルミ版に自由に描いてもらいました。
ツリーのほうは、女の子が星型消しゴムスタンプをおしたり、お絵かきいれたり素敵な母娘合作。
リトグラフのほうは、インクを盛るローラーを転がしたり、プレス機のハンドルも回したりと、ほんとうに頑張り屋さんでした。そして、お父さんもいれて、家族みんなのぶん3枚をすり上げました。

ちいさいお子さんに限らず、私がところどころ手伝いはするものの、ここだけは必ず!と参加者ご自身の手でやっていただいたのが、刷り上がった作品をめくるところ。みんな「わぁああ☆」ってなるの、こちらも大変うれしいかぎり。

こちらは鉄道少年。画力があるので、アルミ版にしっかり描いてもらいました。右側は、描画しおわってからアラビアゴムをスポンジにつけてポンポンと塗っているところ。まず最初は、絵をこすらないように叩くように塗るのです。それもしっかりと注意しながらやってくれました。
彼も、インクのせ、プレス機とぜんぶ自分でがんばってくれて3枚ほど刷ってくれました。かっこいい絵!

そして、猫だいすきマダムによる季節感たっぷりの作品。秋らしいー。そして、すごくふわっふわの猫ちゃんたちの写真をみせていただき、もちろん、わたしもうちの猫ちゃんたちの写真を存分に見せびらかしたのであった笑。

そしてこちらは、MOWリトグラフの良さを全部ひきだしてくれた作品。
版だけをみると、クレヨンで、短いタテ線と点てん、ちいさい四角を描いてるだけだけど、それを切り抜いて、またコンポジションも楽しめるのでした。
それに、手袋の手首のゴム編みに相当するところにある横線は、もともとMOWの紙の折り目の部分、そこをまたうまく使って表現にとりいれてくれました。うまいっ。

ひょんな思いつきから始めてみた、MOWリトグラフだけど、みなさんがこうやって素敵な作品も作り出して、そしてなにより楽しんでいってくださったというのは、私もほんとうに嬉しかったし、楽しかったです!

こういう機会をくださった、平島さんはじめアトリエのみなさま、参加してくださった皆さん、そしてプレス機をかしてくれただけでなく、当日もしっかりサポートしてくれた柿﨑さん、本当にありがとうございました!

おかげで、やっぱりリトグラフはたのしいなー!と思えた秋の一日でありました。

秋のMOWリトグラフまつり、とは。

ほどよくひんやりした秋の一日、春日部市にある「Art & Craft studio T-BOX」さんにて週末催されてた「造形教室展 と 858-市」にお邪魔し、リトグラフのワークショップをしてきました。
備忘録を兼ねて、その様子をまとめておこうかと。

いつものリトグラフの制作風景は、いろいろな工程があり、さらにその各工程のあいだの「待つ時間」がやたらと多くあります。もちろん、そうしなければ出来ない表現があるからなのだけど、でも今回のようなワークショップでは、そこまでしていられません。

とにかく省けるだけ工程を省いて、いきなり20分ぐらいでできちゃうやつにしてみました。

リトグラフってなに?って方に体験してもらうのも大事な目的の一つでもありますが、いっそここまで工程縮めてみるなら、もっと気軽に楽しんでもらおう、もっと遊んでしまおう!ということで、紙を版材にしたリトグラフを考えました。

 

見本というか、試作品いろいろ。

そもそも紙にリトグラフをすると言うのは、夏の終わり頃、やらなきゃいけない用事からの現実逃避(笑)として、なぜかお菓子の空き箱(レヴァン食べてた)にリトの描画材料でいたずら書きをして、簡単に製版して刷ってみたことに始まります。

そのときは「うまくいった!」というにはほど遠く、だけど、もう少しやり方を工夫したら意外に面白いかも……とぼんやり思っていました。そんなころにワークショップ参加のお誘いをいただき、「お菓子の箱でリトグラフしよう!」みたいなのなら工作みたいで楽しいかもと思い、お菓子の紙箱さがしが始まったのです。

それなりに吸水性はあるけど水にふやけず、インクローラーでコロコロ刷るから強度もいる、とはいえしっかりめのマット紙ならいいかといえば、そうでもない。お友達からも空き箱をあれこれ恵んでももらい、いつもなら資源回収にすぐだす空き箱もいちいち「使えるかも?」と溜め込み、使えそうな紙の目処がたってきました。

 

それが、アイスのMOWの外箱の紙だったのですっ。

 

外箱を取られて、本体のみなさんは冷凍庫で休憩中。

 

工程を短くしすぎなため、絵をかくというより、ぐりぐりといたずら書きしたら、あとは(本来のリトなら御法度の)地汚れが、味のあるマチエールになり、また紙なので簡単に切り抜ける──そんなマチエールときりぬく形で楽しめそうな感じになってきました。

だからもちろん、ちゃんと描画をしたいひとたち用に、いつものアルミ版との二本立てにしました。こちらも工程をかなりすっ飛ばしているので、せいぜい3枚ぐらいしか刷れないけれど、それもまたよし。

 

これはチョコ味。もちろん、味はリトグラフ的にまったく関係ないです。

 

そんなわけで、題して「秋のMOWリトグラフまつり」開催!となったのでした。いや、ほんとはこのお題は後からつけましたが笑。

なんだか長くなってきてしまったので、肝心のワークショップ内容は、次回に続けることにします。