Happy Holidays!

年も暮れて来ました。
またもあっという間の一年。こないだ年明けたばかりだったのに・・・と思いつつ、今年もあと数日。

リトグラフの木!

このブログも、こまめに更新するつもりが、これで今年4回目の投稿(笑)。来年はもう少し書くこと増えるのではと思います。思いたい。

さて。上の画像は、「リトグラフの木」。
毎年この時期になると、リトグラフの描画材料などでこんな画像をつくって、SNSにアップして遊んでいるのでした。

てっぺんの「星」は、ちいさな黄色いスポンジ。アラビアゴムという薬品を塗るときに使います。木の枝葉はどれもリトグラフの描画材料で、左側が紙巻鉛筆で色鉛筆のようなタッチ、右がクレヨンのようなかんじ、どれも鉛筆のHやBのように硬軟が5段階あります。根っこは、片手ローラーのローラー抜き(掃除のために外したり、またゴムローラーは消耗品なのでたまに買い換えます)。

年末といえば、いつも年賀状の準備をしていて、年が明けてから作ってることも多かったけれど、今年はなぜかもう出来上がって投函も済ませました。
しかし、それであとはのんびり大掃除でも・・・とはいかず、そして正月の準備もなく、制作に励む予定。
なにしろ2月にひかえる展示の作品をあれこれ考え制作するのです。

また近くなったら告知しつこくする予定ですが、2月にグループ展ふたつ。そして年末には久しぶりの個展があります。

描きたいものを描くというのは、ほんとうに難しい。がんばりすぎず、でもがんばります。

来年がたのしい一年になりますように。

カルメラさんとちいさな不寛容

ふだんはリトグラフの作品を作っていますが、10年ぐらい前までしばらく銅版画で物語のようなものを作って、それを手製本に綴じることもしていました。
主人公はすべてカルメラさんというひとで、8作ぐらいシリーズ化していました。
唐突ではありますが、そのころの作品をひとつご紹介します。

「カルメラさんとちいさな不寛容」

1. 
《清らかな生活》
ある丘のうえにカルメラさんというひとが、暮らしていました。カルメラさんは、まいにち朝はやくから起きて、ちいさな家のすみずみまでしっかりはたきをかけて掃除をするのが好きな、一人暮らしの主婦でした。そして、ドーナッツをつくったり、庭でキャベツを育てたり、読書をして日々をすごしていました。ときどき誰かが訪ねてくる時もありましたが、ひとり静かにすごすことをとても大切に思っていたのです。それは、ねこのガブリエルと一緒に暮らすようになっても、変わることはありませんでした。

2.
≪おだやかな日々≫
ねこのガブリエルは、しばらく前のある日、おなかをすかせてカルメラさんの家にやってきました。ずっとねこを飼いたいと思っていたカルメラさんがあれこれと世話を焼き、今ではすっかり懐いています。とはいえ、ガブリエルにもひとりの時間がたくさんありました。ときどきは、はぐれてしまった遠い世界の両親のことを思い出します。いつか迎えてきてくれるのではないだろうか、そんなことを思ったりしながら、大好物のドーナッツを食べたりコーヒーを飲んでごろごろしては、日々を過ごしていました。

3.
≪ひみつの扉≫
カルメラさんの家のかべには、いくつかひみつの扉がありました。ねずみの穴よりすこし大きく、どれもカルメラさんがきれいなカーテンをつけています。そしてその扉の向こう、かべの裏側には、また別の世界がありました。その世界に住む存在がいるのです。カルメラさんはドーナッツをつくると、かべの向こうにもその香りが漂うようにしてあげます。もしお腹がすいていたら食べにくればいいし、欲しければコーヒーもだしてあげるようにしていました。毎週金曜日には、こどものリャマのアントニオがキャベツやドーナッツの外側を食べにやってくるし、いつもスケートボードにのっているクールなおんなの子バンビーナも、よく姿を見せました。

4.
≪現れたよびかけ≫
カルメラさんお手製のポンポンえりまきをしたねこのガブリエルは、バンビーナにとって、ふしぎな存在でした。カルメラさんから、ねこを飼うことにしたと紹介してもらった時から、ちょっと変わったねこだと思っていたものの、とてもうれしそうなカルメラさんをみて、それは言えませんでした。しかし、きょうのバンビーナは何かを企んでいました。

5.
≪掠われたガブリエル≫
バンビーナは、ねこのガブリエルをひみつの扉から広がるかべの裏の世界へ、おびき寄せることに決めました。大好物のドーナッツに紐をつけた仕掛けをつくると、ガブリエルはかんたんにひっかかりました。読書をしていたカルメラさんが気づくことはありませんでした。何が起きたのかまったくわからないガブリエルは、仕掛け罠とも気づかず、ただドーナッツをしっかり握りしめたまま、小さなひみつの扉にぎゅうぎゅうと吸い込まれていってしまいました。

6.
≪真実のとき≫
扉の向こうは、真っ暗でした。しばらくすると目が慣れて、そこにはバンビーナとリャマのアントニオがいるとわかり、ガブリエルはすこしホッとしました。そしてバンビーナが、みんなで楽しいところに行こうよ、とウソをついて、自分のスケートボードにガブリエルを乗せてやりました。なにもわからないガブリエルは、うれしくなりました。前からこのスケートボードに乗ってみたかったのです。その時でした。バンビーナとリャマのアントニオが、いきなりガブリエルのねこ頭巾をひっぱりました。

7.
≪深い悲しみ≫
その頃、カルメラさんはようやくガブリエルがいなくなったことに気がつきました。家の中じゅう、そして庭のキャベツ畑の、キャベツひとつひとつの中までさがしたけれど、みつかりません。どこへ行ってしまったのだろう、紐でつないでおけばよかったのかもしれない、いろんなことが頭をよぎりました。ずっと一人が好きで、ずっと一人暮らしのカルメラさんですが、なんだかとても悲しくなってしまいました。

8.
≪お互いのため意味がない≫
バンビーナには、わかっていたのです。ガブリエルは、宇宙人のこどもでした。両親と宇宙船にいたのに、この街へうっかり落っこちてしまったのです。お腹をすかせてカルメラさんの家にあるドーナッツを食べているところを見つかり、それ以来カルメラさんに「ねこ」として飼われてきました。かわいいねこ頭巾も作ってもらいました。それがバンビーナには気に入りませんでした。ガブリエルは、カルメラさんの求めるねこではないし、カルメラさんは、ガブリエルの求める両親ではありません。なのに、カルメラさんちのねことして暮らすのは間違っている―――バンビーナはそう告げました。

9.
≪自分のための人への思いやりは正しいことではない≫
バンビーナによれば、カルメラさんがガブリエルによせる愛情は、ねこをかわいがりたいという気持ちの代替えであり、本当にガブリエルが求めるカタチを与えているものではない、というのです。そして、ガブリエルもまた、ほんとうなら宇宙船に戻って両親と暮らし、いろんな星を攻撃し征服することが、本当のよろこびのはずで、ドーナッツをもらってなでなでしてもらうことが、幸せではないはずなのです。相手に何かをしてあげたいという自分の欲求、それは自分のためのものでしかなく、また一方で、現実から目を背け代替えのものに甘受する。それらは間違っているのだ、とバンビーナは力説しました。

10.
≪悲しみはずっとつづく≫
ガブリエルはわからなくなりました。宇宙船の両親に会いたい気持ちは確かにありました。そして、もし自分がねこではなく、宇宙人とわかったとき、カルメラさんはこれまでと同じようにドーナッツをくれるのでしょうか。もしくれなかったら、攻撃すればいいのでしょうか。そもそもガブリエルは、ねこらしく過ごしてきたのでしょうか?―――自信はまったくありませんでした。どうしたらよいかもわかりませんでした。ただ、カルメラさんのところに戻って、一緒にドーナッツを食べたいと思いました。それが問題の解決ではないと、それだけはガブリエルにもわかっていました。

11.
≪理解しないことと寛容であること≫
ガブリエルが帰ってきて、カルメラさんはおお喜びでした。本当のねこではないと、気づきたくはないのかもしれません。そしてガブリエルもまた、うれしく思っているようでした。本当に再会をのぞむ家族ではないのにです。すこし高揚したこの場の空気をやさしさと受け止めることは、バンビーナにとって居心地が悪いものでしたが、その場を立ち去るには、ドーナッツのあまい香りが強すぎました。うれしそうな二人の姿を見て、バンビーナにはかすかな怒りすらこみあげましたが、いそいでそれを、もらったドーナッツと一緒に飲み込みました。バンビーナには、わかりませんでした。わかりたくもありませんでした。

* * *

さて。
ここからちゃっかりとした情報。
最近よくみるTシャツなどグッズを作ってくれるサイトで、Tシャツセールをしているというので、なにか作ってみたかったのです。
ということで、このなかの1枚をつかってみました。
よかったら見てみてください →こちらから😀


「マメ版画まつり」に参加します!

新緑の5月!
丹沢アートフェスティヴァルのひとつとして、90人ほどの版画家たちによる小さなマメ版画で遊ぶ展覧会、その名も「マメ版画まつり」。
このたび初めて参加します!

ただの小品ではなく、たのしい「マメ」版画でなくては!と、この機会につくってみた作品をちらっと紹介しつつ、東京は緊急事態宣言など、なかなか難しい時期ではありますが、ご無理のない範囲でご高覧いただければ幸いです。

会期は5月いっぱい、会場となるのは小田急線渋沢駅すぐそばの一軒家フレンチ「ぶらっすりー千元屋」さんのレストラン兼ギャラリー、鑑賞のみOKです(現在、お食事は要予約とのこと)。
展覧会詳細については記事末をごらんくださいー。

わざと手に持ってみましたが、こんな感じに小さいリトグラフです。
しかも!
このフレームは両面からみることができるため、この裏にも作品が!
どーゆーことかというと、まずこんなふうに刷り・・・↓

刷った紙をひっくりかえし、裏にもう一枚、版をおいて刷りました。
表の3つの版のプレートマークがうっすらみえるでしょうか。この両面する版はそのため裏表に版の形をおなじにしてあります。


こうして、上記のような4つの版を使ったものから、そのなかの裏表2枚だけを刷った小さいやつまで、出来あがりましたー。

↑を、裏返すと・・・↓


というわけで、表からも裏からも、さらには光に透かしてみても↓、またちょっと見え方が変わって楽しい(はず)。


2枚のみの裏表さんたち。


あとほんのすこし旧作もだします(こちらはふつうに片面のみ)。

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<展覧会詳細>

マメ版画で遊ぶ展覧会「マメ版画まつり
5月1日(土)~5月31日(月)12:00am~5:00pm
(火・水曜定休)※GW期間中も同じ
会場:ぶらっすりー千元屋 

地図   神奈川県秦野市曲松2-7-7 電話 0463(88)7117 
【交通】小田急線渋沢駅南口より徒歩3分。(新宿より1時間10分くらい)
お車では、東名高速・秦野中井インターから約12分 、大井松田インターからは約15分。

ご無理のない範囲で、どうぞよろしくお願いいたします!