Diario di visita: 辰野登恵子 オン・ペーパーズ

今年は展覧会を見に行ったことも、ブログに書いていこうと思います。
題して、シリーズ「Diario di visita 鑑賞日記」。
果たしてつづくのであろうか。

展覧会はたいてい、まだやってると思ってるうちに会期末間際になり
滑り込むことがおおく、今回もそのひとつ。
辰野登恵子 オン・ペーパーズ@埼玉県立近代美術館。

オン・ペーパーズだけあって、タブローではなく
ドローイングや版画がメイン(タブローもあったけど)。
初期の時代からシルクなど版画作品に取り組んでいたことを知りませんでした。

とりわけ初期のシルクスクリーンは、ノートの罫線やドットなど
一見、無機質なモチーフながら、同じ版をなんども重ねたりモノタイプに近い制作なのかな。
でもその無機質なところへ手を加えていくことで、まったく見え方が違ってくる。
私も小さいとき、地面のタイルなどの模様をひたすら目で追って
脳内で自由に線画をつくる一人遊びが好きだったので
(それとは違うだろうけど)とても共感してしまった。

また初期作品は、イタリアのファブリアーノ紙がよく使われていたようで
当時にしてはかなり贅沢品だったのでは……と下世話な感想も抱きつつ、
だけど80年代ぐらいになると、なぜか国産ブレダン紙が多い。
当時のこの紙はかなり評判悪かったので、高級舶来物から不人気国内品に
変わったところも謎ながら、勝手にあれこれ妄想。

そして、やっぱり最後の展示室のリトグラフ作品は見ごたえあり。
いずれも、パリのリトグラフ工房idemによる刷りで、
数年前に東京ステーションギャラリーで行われた工房の展覧会でも
辰野作品が数点展示されていました。

ただ、年表をみるに、idemとのリトグラフ制作は、作家晩年の数年のようで
もっとリトグラフ制作が続いていたら、と思わずにいられない。
肉筆と版画が、ぞれぞれの制作を刺激し合うようなかんじだったのかな。
ただ、私自身が版画を作ってるせいもあって、
元絵というか下絵となる原寸下書きと、出来上がった版画が
隣同士で並んでる展示はどうなのかなと思いました。
しかも、下絵の方が、額がちょっと大きい(笑)。
かつて、タブロー作品を手ごろな価格で量産販売するための版画作品ならともかく、
いまの版画は、版画として刷り上がってはじめて作品なのであって、
下絵は「原画」とは違うのにと思ってしまう。

とはいえ、そのへんは版画やってる人だけがぐちぐち思うことだろうから
まあいいや……とおもいつつ。
ともかく、オン・ペーパーズ作品どれも素晴らしかったー。

そして、埼玉県立近代美術館といえば、やっぱり椅子!
どれかもらっていいって言われたら妄想をして、
お気に入りを選びました。

猫ちゃんをこの椅子に座らせて、隙間から猫じゃらしを出して遊ぶのだ。
(妄想)

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辰野登恵子 オン・ペーパーズ
2018年11月14日 (水) − 2019年1月20日 (日)
埼玉県立近代美術館 サイト

2019はじまり。

今年もどうぞよろしくお願いします。

 

昨年ウェブサイトを模様替えして、あれこれ投稿しようとおもっているうちに新年明けてしまいました。今年こそなんとかがんばりたい。

 

さて、まずは今年の年賀状から。

 

ここ数年の年賀状はだいたいリトグラフで作ったものか、木版画で作ってからそれをプリントゴッコのどちらかですが、今年はリトグラフ!
2種類の絵柄を作りました(一枚ずつ刷るより、2枚ずつ刷る方が早いという現実的理由もあり)。

絵のモデルは、うちの猫ガブリエルちゃん。

 

ふだんのリトグラフ作品は10枚ちょっとぐらいしか刷らないのもあって、年に一度、こうして大量に枚数する経験もとても貴重です。
そして、わたしのなかではいつも何かしらチャレンジというか、実験的なことを取り入れていて、それがふだんの作品作りに活かされることがよくあります。とはいえ、たいてい技法的なことなので、できあがった作品にはあまり関係ないことかも。

昨年はひさしぶりに個展もせず、のんびりだらだら過ごしてしまったので、今年はとにかく制作に励みたいと思います。そして、来年あたりにちゃんと個展ができるといいなあ、と。

 

そんなかんじで、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

最後の画像は、もうすぐ開かれるのを待つばかりの餅。揚げ餅にするよ。

秋のMOWリトグラフまつり、しました。

前回投稿のつづきです。というより、いよいよ本題。

ワークショップをしたのは、春日部にある Art & Craft studio T-BOX。平島鉄也さんという金工作家のかたの工房であり、お教室であるところ。
そこで毎年、秋の週末にお教室の作品展や、クラフト系作家さんたちの出店など盛りだくさんな「858−市」が開かれていて、私はそのうちの一日だけ、リトグラフ・ワークショップとして参加しました。
その前日には、銅版画作家のヒルネ版画工房かずみさんが紙版画ワークショップをなさっていて、柿さん持ち込みのプレス機をちゃっかりそのままお借りしてのリトグラフでした。

店先(といっても、机二つ並べたオープンなところ)はまずこんな感じ。見本作品をならべてみました。
11月下旬だったのものあり、ただ「リトグラフを作ろう!」よりも「クリスマスカードを作ろう!」ってかんじに。もちろん「MOWの紙で」も忘れずアピール笑。

お借りしてのプレス機まわりもこのように。見えにくいけど、くまちゃんのはちみつボトルは、アラビアゴム(ピュアと薬品酸度高めのと)入れています。

制作に参加してくださった方たちは、まさに老若男女の小さいお子さんから元気な先輩方まで。
みなさんの作ってるところや出来上がった作品を、全員ぶん写真にとってなかったのが大変悔やまれるけれど、なんとか忘れずに撮影したのを少しご紹介します。

まずは、ちいさい女の子とそのお母さん。
お母さんは、MOWリトグラフでツリーを、女の子はアルミ版に自由に描いてもらいました。
ツリーのほうは、女の子が星型消しゴムスタンプをおしたり、お絵かきいれたり素敵な母娘合作。
リトグラフのほうは、インクを盛るローラーを転がしたり、プレス機のハンドルも回したりと、ほんとうに頑張り屋さんでした。そして、お父さんもいれて、家族みんなのぶん3枚をすり上げました。

ちいさいお子さんに限らず、私がところどころ手伝いはするものの、ここだけは必ず!と参加者ご自身の手でやっていただいたのが、刷り上がった作品をめくるところ。みんな「わぁああ☆」ってなるの、こちらも大変うれしいかぎり。

こちらは鉄道少年。画力があるので、アルミ版にしっかり描いてもらいました。右側は、描画しおわってからアラビアゴムをスポンジにつけてポンポンと塗っているところ。まず最初は、絵をこすらないように叩くように塗るのです。それもしっかりと注意しながらやってくれました。
彼も、インクのせ、プレス機とぜんぶ自分でがんばってくれて3枚ほど刷ってくれました。かっこいい絵!

そして、猫だいすきマダムによる季節感たっぷりの作品。秋らしいー。そして、すごくふわっふわの猫ちゃんたちの写真をみせていただき、もちろん、わたしもうちの猫ちゃんたちの写真を存分に見せびらかしたのであった笑。

そしてこちらは、MOWリトグラフの良さを全部ひきだしてくれた作品。
版だけをみると、クレヨンで、短いタテ線と点てん、ちいさい四角を描いてるだけだけど、それを切り抜いて、またコンポジションも楽しめるのでした。
それに、手袋の手首のゴム編みに相当するところにある横線は、もともとMOWの紙の折り目の部分、そこをまたうまく使って表現にとりいれてくれました。うまいっ。

ひょんな思いつきから始めてみた、MOWリトグラフだけど、みなさんがこうやって素敵な作品も作り出して、そしてなにより楽しんでいってくださったというのは、私もほんとうに嬉しかったし、楽しかったです!

こういう機会をくださった、平島さんはじめアトリエのみなさま、参加してくださった皆さん、そしてプレス機をかしてくれただけでなく、当日もしっかりサポートしてくれた柿﨑さん、本当にありがとうございました!

おかげで、やっぱりリトグラフはたのしいなー!と思えた秋の一日でありました。