【固定投稿です。最新記事はこの下の投稿からはじまります】
こんにちは。
東京のはじっこの小さなアトリエで、リトグラフを作っているfantafonteです。
作品をごらんになりたいかたは、ぜひworks(Tumblrサイト)をごらんいただけたらうれしいです。気になる作品がありましたらお気軽にご連絡ください。
アトリエでは、かんたんなリトグラフワークショップも随時開催していましたが、こちらはCovid19が落ち着くまで、お休みいただいています。

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2021年、令和 3年、あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年も年賀状は、プリントゴッコでつくりました。
・表3版5色+裏1版1色
・メッシュ製版 JAM発注
・用紙 ミルトGAスピリット(ナチュラル)180k
・130枚ぐらい(非限定エディション)、サイン入り
プリントゴッコ(以下、プリゴ)が世を去ってから久しいものの、まだまだウチでは現役です。なによりあのパタパタと刷りあがる楽しさ。わたしにとって年末年始最大の楽しみと言っても過言ではありません(住所録整理や宛名書くのは苦手なので、年内に投函できたことはほとんどないけど)。
製造中止からもうだいぶ経ちますが、インクは譲っていただいたものや最後に買いだめたのがまだまだあり、そしてハイメッシュマスターもそれなりにある。しかし、とうとうあのピカッとするランプが、あと一回分になってしまいました。これでは製版ができません。
ということで、今回ははじめてレトロ印刷でおなじみJAMさんに製版を外注してみました。そんなこともあり、あらためてプリゴでの年賀状制作について書いておこうと思います。
* * *
まずは版の準備。ここは今までと同じで、手描きの絵をもとに、スキャナで取り込み、分版を考えつつ、版ごとのデータをつくります。今年は丑年なので牛の絵です()。
今回3版つくることになりました。宛名面用にもう1版必要だけど、それは2版目の余白をつかってすますことに(マスキングして別々に刷る)。
これまでなら、ここで各版のデータをプリンタ出力して、コンビニに持ってってコピーをとり、プリントゴッコの「ピカッ!」な製版をするところでしたが。
でも、今回はこのデータのまま、JAMさんに入稿。プリゴで使う場合、200メッシュがよいそうです。そして翌々日ぐらいにもう届きました。早い!
絵の部分はさほどこれまでとの違いは感じませんが、文字についてはやはりデータから直で製版されるので、すごくキレイ。
しかし、メッシュはキレイに仕上がっても、プリゴで刷るには、これまでのような枠がいる・・・ということで、ハイメッシュマスターもどきのフレームを厚紙で手作り。
枠も3つ。製版はLサイズ一枚にしてもらったのを切り分けて、3つの枠に張り込みました。厚紙・両面テープ・メッシュ・両面テープ・厚紙のサンドイッチみたいな感じ。ほどよくピンと張るのがちょっと難しい。
とにかく、枠のでっぱりの向きとメッシュのオモテウラを間違えないように、しっかり注意。
そしていよいよ、刷ります。まず1版目は1版3色。
インク周りのグレーのスポンジは、となり合ったインクが混ざらないようにするためのプリゴ用品ですが、私は隣り合わない所にもいつも使うことにしています。こちらもそろそろなくなるところだけど、なにか代用品考えねば。
ハイメッシュマスターにはインクの上にかぶせる透明シートがついてましたが、それも代用品で。キッチン用品ながら、ふだんから私の版画制作にもなくてはならない便利グッズ、プレスンシールを使いました。ピタッと貼れてよい。
プリントゴッコの良いところは、インクが早く乾くところ。1版目を刷って数時間後に、いまのうち反対の宛名面を刷っておく(2版目兼用)。そしてまた数時間してから、その2版目の本来の版をパタパタ刷りました。
早く乾くとはいえ、この刷るときに紙をおく台は、紙が出てきたインクにくっついて持ち上がらないよう相当粘着力があるので、裏の刷ったところが直接触れないようカバーしておく。いくらインクの乾きがはやくても、それなりにインク取られるので。
刷り始めたら、ひたすら一気に。とはいえそれなりに馴れているので、紙をさす、プリゴ本体をギュッと押して刷る、刷った紙をラックに置く・・・という一連の作業が5秒/枚ぐらいでいけるので(正確には、左手で刷った紙をラックに置きつつ、右手でもう次の紙を刷り台に置いてる感じ)、130枚刷っても15分かそこら。このパタパタあっという間に刷りあがるのもプリゴの醍醐味で、いっぱい刷り上がったのをみると、やたらと気分もあがります。
上の写真は2版目(と裏の1版)まで刷ったところ。つづきは翌日に。
いよいよ最後の3版目。まずはインクを混ぜる調色から。黒ではあるけど、金色や茶色など何色か混ぜたもの。これまでのどんな色もチューブからそのまま使うことはまずないです。
この版もインクが横に流れていかないように、グレーのやつを。横に広がらず最小限のインクで済むような気がして、いつも2階建てにしている。とはいえ絶対これを使わなきゃというより、ピンセット使ったりするこの地味な作業がなぜか好きというのが最大の理由かも笑。「インクブロック」という商品名でした。
そしてインクをもりもりと。100均のお菓子作りグッズ売り場にある絞り出し袋が、とても便利。100円で15袋ぐらいはいってるので数年はもつはずだけど、なぜかどこにしまったか忘れしまうので毎年買います・・・。
そしてこちらもパタパタと一気に刷りあげました。
あとはちゃちゃっとサインを入れて、年賀のスタンプ(もう何年も使ってる消しゴムはんこ)を押してできあがり!
* * *
まとめ。
外注したメッシュはまったく問題なく、文字に関していえば、これまでのコピーからピカッ!より断然きれい。枠に貼り込むのも、多少張りが弱くても問題なさそうでした(もちろん、ぴんと貼れるに越したことはないけど)。てことは、あとはインクさえあれば、プリゴはほぼ永遠に使えることに。
プリゴインクは油性なので、同じ油性のリトグラフのインク(うちにたくさんあるし)で試してみたけれど、結果からいうと、それなりに使えました。
とはいえ、刷り自体はほぼ問題ないけれど、インクがなかなか乾かない。ふだんのリトより乾きが悪い。やはり孔版だからインクが出過ぎるのかな。丸一日たってもセット(インクは乾ききってないけど、軽く手で触れてもインクはつかない状態)にはならないのであった。
トライ&エラーで、インクのメッシュの抜けやすさと出具合(それが乾きやすさにも)の加減がつかめるようになればいいけれど。ほんとにインクにしろ、プリゴはよくできた商品だったと改めて思いました。
でも、今後に備えて、ちょっとずつ考えて工夫しなくては。
以上、年に一度の楽しい年賀状作りでした!
ステイ・ホーム期間中に、思いつきではじめた
「やってみよう!リトグラフ」という、ステイ・ホームなワークショップ。
実際どんなかんじの作品ができあがるんだろう?
ということで、作品公開にOKくださったみなさまの作品を
ばばーーん!と紹介しますっ。
★まず一番手は、電車だいすき小学生のKくん。
とれたんずの「けいひんとうほくん」とのこと。
「はたらきもので がんばりやさんの男の子 たのまれたらいやとはいえない」
キャラだそうで、そんなわけで私も、インクの色は黒か赤の2択です、なんて
無粋なことは言わず、青24号(京浜東北線の色名だそうです)に合わせて調色してみました!
とっても素敵に仕上がり、一枚いただけないかお願いしたところ
けいひんとうほくんと同じく「たのまれたらいやとはい」わずにくれました!
やったー。
Kくんは、数年前に春日部のTーBOXさんという造形教室で開催した
ワークショップにも参加してくれてます。
★続いては「やってみよう!リトグラフ」でたくさん動物の絵を
描いてくださったRさん。
実際に動物園に足を運び、観察しての力作です。生き生き。
★続いては、切り抜きを活かした、蛙月庵さんのアマビエちゃん!
花びらのような形の切り抜き指定は、散華のイメージとのこと。
このアマビエ散華のパワーはすごそう。
和のイメージだし、ためしに和紙にも刷ってみました(左)。
右はいつものポストカード用紙。どちらもとても素敵。
★つづいては料理人でもあるSさんの、お魚くわえたどら猫ちゃん!
よく見ると、細かい文字をアラビアゴムで抜き仕上げにしている緻密作品!
ここまで細かくできてるのはすごい。
こちらは「やってみよう!」を思いつきで呼びかけて、すぐに参加してくださったため、版のはじっこまで描くけど紙には写らないよ!という注意が間に合わず、たいへん申し訳ないことに端っこまで力作になってしまい(汗)特別対応として大きい紙に刷ってことなきを得ました。
★そして、お友達お知り合い対象に自宅アトリエでリアル開催していたワークショップのころ参加してくださったKSご夫妻の作品も!
かわいい窓辺の犬ちゃん(妻さん)。うちの窓辺から発想を得たとのこと。
「やってみよう!リトグラフ」で各自描画していただくのと、自宅アトリエにお越しいただいてたWSと技法的に手順はほぼ同じですが、描画材料のうち、解墨か、謎の綿棒か、という違いがあります。
解墨はかなり加減が難しく、目の前で作業をみながらでないとちょっと心配。「やってみよう!」で使う「謎の綿棒」は失敗する可能性はそれほどありません。仕上がりはそれぞれですが、どっちにも良さがあると思います。
解墨つかうとこんな感じ。独特のタッチが活きてるパンダちゃん(夫さん)。
もうひとつ、在宅WSでの大きな違いは、ご自分でプレス機回して刷っていただくこと!私は口でいうだけで、ぜんぶご自身でローラーころころもプレス機ぐるぐるもやっていただくのであった。スパルタびしびし。
きびしくも、ささやかにお茶とおやつ付き。
なので、時間内に収まるなら、2作目にチャレンジしていただくことも。私はみてるだけなので笑。
そんなわけで、ワークショップは、どちらにもそれぞれの良さがあります。
それこそワークショップに限らず、コンサートなどでも、じかに見るライヴのよさはもちろんあるけど、でもどこからでもいつでも参加して楽しめるのは、やはり新しい楽しみ方のひとつですよね。「ライヴで直接見られないから仕方なく」だけではなく。
なので今しばらくは、予防対策をしっかりとりつつ、今ならではやり方で楽しむのがいいかな、と思っています。
作品画像提供にご協力くださった参加者のみなさま、どうもありがとうございました!!!
「やってみよう!リトグラフ」の流れをあらためて、ごらんになるにはこちらからどうぞ。
なんだかんだと引きこもったまま師走!
今年の5月ごろ、思いつきでやってみたステイホームなワークショップを、
せっかくなので画像解説つきで記録しておこうと思います。
アトリエにお越しいただいてたリトグラフの体験ワークショップの通信版、
その名も「やってみよう!リトグラフ」。
もちろんzoomでやるとかではなく、上記にある版や描画材をお送りして、
おうちでお好きなときに描画ののち返送いただき、
こちらで製版&刷り、そして出来上がりをお送りする企画でした。
絵を描き慣れてる方はもちろん、リト初心者の方、お子さんまで
ご参加いただきました。
その作品のかずかず画像はこちらに(画像提供ありがとうございました!!)。
ここで、リトグラフ豆知識!
リトグラフは、水と油の反発を利用した、版画の一種です。
18世紀末、ドイツ人のアロイス・ゼネフェルダーさんが新しい印刷方法をあれこれ工夫するなかで発明しました。ほんとうはお父さんのように役者になりたかったゼネフェルダーさん、でもパッとせず、舞台でつかう楽譜をたくさんばんばん刷れる方法を見つけてがっつり稼ごうと決意。結果として現在のオフセット印刷につながる大発明でありました。すごい偉い。
詳しくは→ The Invention of Lithography by Alois Senefelder
下書ききっちりなんてしないで、気分の赴くままに描いてみようー。
でもやっぱり下書きしたいときは、ポンキーなどでうすーく目立たないように
あたりをつけておくのもよし。描いたものを消すことはできません。
描画するときに、ものすごく大切なこと。それは、版に直接さわらない!!
リトは版に油性の描画材で絵を描きます。
黒い色はどこに描いたかを、人の目にわかりやすくしてるだけ。
版にとって重要なのは、色でなく、描画材料の油性分がついたかどうか。
つまり手でペタペタすると手の脂で描画したのと同じことに!!
下の画像のように、紙をあてて手を置くといいよ。
とはいえ、こちらのほうは切り抜いて刷りたいので、もうひと作業。
切り抜きは、私がやる製版工程の最後にやるため、おうちで版を切り抜いてしまわないでね。そのためにどこを切るかトレペに線で書いておいてください。
描画や、必要なら切り抜き線の指定がすんだら、版を送り返してもらいます。
(ポンキーやキャップなども、もし返していただけたらうれしい・・・)
ここからは、私の作業。まずは製版!
これで製版その1が終了。しばらく版を休ませます(これもすごく大事!)。
すごく急いでたら、2時間後ぐらいに次の行程に進みますが、
ふだん自分の作品でデリケートな描画のとき、数日おくことも。
というわけで、製版その2へ。
ここから先、刷り始めるまでは、水分は大厳禁!!
さっき塗った、アラビアゴムの層が見えないけどしっかり効いています。
ようやくここまできました。刷りましょうー!
先ほどのラッカーを塗った版に、刷りに使うインクを少量なじませてから、
版を、水で洗い、アラビアゴムを流します。
用意したインクをローラーで版にのせます((ΦωΦ))
油と水の反発による版画リトグラフ。
かならず版面を水で湿しながら(黄色いスポンジ)、油性のインクで刷ります。
これまでしてきた製版の目的は、
描いたところを親油性に、描いていないところを親水性にすること。
だから、絵を描いたところにだけ、描いたとおりに油性インクつくわけです。
プレス機へ。
今回は、銅版画用の小さなプレス機を使っています。
(大きいリトプレス機は、本ブログのトップ固定投稿にある画像参照)。
紙(ポストカード)に版をのせて、プレス機をぐるぐる。
そして、いよいよ・・・。
同じようにして、どんどん刷っていきます。
次は、もう一つのコーヒーカップの版を同じように、今度は黒いインクで。
こちらはポストカード全面に刷るため、版にも目一杯に描きました。
版はポストカードより少し大きいので、はじっこまでは刷れないけれど、
でも全面に刷るために、余分に描いておくことが必要なのです。
そんなわけで、ようやく、みんな刷り上がりました!!!
数日インクが乾くまで待ってから、版と一緒に、刷り上がりをお送りして、
「やってみよう!リトグラフ」完成です!!
楽しく製作をしながら「手洗いしっかり・3密をさける・マスクをつける(フェイスシールドとかでなく)・こまめに換気・体調悪いときは休む」もう少し続けていきましょー。
ながーーい投稿になってしまいましたが、おつきあいありがとうございました!
「やってみよう!リトグラフ」また、過去にアトリエで開催したワークショップで生まれた作品たちはこちらで紹介しています!ぜひご覧くださいねー。
最後にもうひとう、リトグラフ豆知識!
リトグラフはもともと石(石灰岩)を版にしていました。なので石版画とも呼ばれます。なんでそんな重たいものに?と思うけど、かつてはたやすく入手できて、なんども削って使えてコスパもよかったからでしょう。
その石版石の名産地ドイツのゾルンフォーフェンは、もう一つ有名なものがあります。
それは始祖鳥の化石!!
ゾルンフォーフェンのリトグラフ石版石の石切場から見つかりました。
そのため、始祖鳥(最初はその羽について)の学名は、アーケオプテリクス・リトグラフィカと、リトグラフにちなんだ名前になっています。すごいね!